主要なアジア諸国の商標制度の概要


<タイ> <ヴェトナム(ベトナム)> <インド> <インドネシア>
<フィリピン> <マレーシア> <シンガポール> <カンボジア>
<ラオス> <ミャンマー> <中国> <台湾> <韓国>

1.タイ

(1)審査制度の有無 第三者の先登録商標等との類否判断などの審査あり
(2)国際分類 国際分類を採用(但し、1商標1区分毎に出願)
具体的な商品・サービスの1つ当たりで費用が加算される
(3)出願時の使用宣誓書等 要求されない
(4)存続期間 出願日から10年間(その後10年毎に更新できる)
(5)更新手続 使用証明などは要求されない
(6)異議申立制度 公告後90日以内は何人も申立できる
(7)不使用取消審判 継続して3年間不使用であることが必要である
(但し、不使用の証明責任は商標権者にある)
(8)マドリットプロトコル  未加盟

<タイでのポイント>
商品などの1個あたりで費用が加算されますので、できるだけ必要な商品などだけに限定して出願されることをお勧めします。
不使用取消審判では不使用の立証責任が商標権者にありますので、この審判が認められる可能性は低いものと考えておく必要があると思います。



2.ヴェトナム(ベトナム)

(1)審査制度の有無 第三者の先登録商標等との類否判断などの審査あり
(2)国際分類 国際分類を採用(1商標多区分できる)
但し、1区分で6個を超える指定商品・サービスを指定すると追加費用必要
(3)出願時の使用宣誓書等 要求されない
(4)存続期間 出願日から10年間(その後10年毎に更新できる)
(5)更新手続 使用証明などは要求されない
(6)異議申立制度 出願公開後から登録査定までは何人も申立できる
(7)不使用取消審判 継続して5年間不使用であることが必要である
(8)マドリットプロトコル  加盟

<ヴェトナム(ベトナム)でのポイント>
1区分で商品などが6個を超えると費用加算が発生しますので、できるだけ必要な商品などだけに限定して出願されることをお勧めします。
異議申立が出願公開後から登録査定までの間にできますので、重要な商標については、第三者の出願動向をウォッチングされて異議申立をされることもご検討下さい。



3.インド

(1)審査制度の有無 第三者の先登録商標等との類否判断などの審査あり
(2)国際分類 国際分類を採用(1商標多区分できる)
但し、指定商品・サービスの記載が500字を超えると追加費用必要
(3)出願時の使用宣誓書等 商標の使用説明書の提出が要求される
(4)存続期間 出願日から10年間(その後10年毎に更新できる)
(5)更新手続 使用証明などは要求されない
(6)異議申立制度 公告日から3ヶ月以内に何人も申立できる
(7)不使用取消審判 継続して5年間不使用であることが必要である
(8)マドリットプロトコル  未加盟

<インドでのポイント>
1区分で500文字を超えると費用加算が発生しますので、できるだけ必要な商品などだけに限定して出願されることをお勧めします。
他の国に比べて審査期間が長いですので、できるだけ早く出願されておかれることをお勧めします。また、異議申立がなされる件数が比較的多い国ですので、この異議申立がなされると登録されるまでに長い時間が必要となります。



4.インドネシア

(1)審査制度の有無 第三者の先登録商標等との類否判断などの審査あり
(2)国際分類 国際分類を採用(但し、1商標3区分以内)
但し、1区分内で指定商品・サービスが3個を超えると追加費用必要
(3)出願時の使用宣誓書等 使用宣誓書の提出が要求される
(4)存続期間 出願日から10年間(その後10年毎に更新できる)
(5)更新手続 更新時に使用宣誓書の提出が要求される
(6)異議申立制度 公告後3ヶ月以内は何人も申立できる
(7)不使用取消審判 継続して3年間不使用であることが必要である
(但し、不使用の証明責任は商標権者にある)
(8)マドリットプロトコル  未加盟

<インドネシアでのポイント>
1商標で3区分までまとめて出願できますが、場合によっては審査期間が長くなりますので注意が必要です。
不使用取消審判では不使用の立証責任が商標権者にありますので、この審判が認められる可能性は低いものと考えておく必要があると思います。



5.フィリピン

(1)審査制度の有無 第三者の先登録商標等との類否判断などの審査あり
(2)国際分類 国際分類を採用(1商標多区分できる)
(3)出願時の使用宣誓書等 出願日から3年以内に使用宣誓書(公証が必要)の
提出を要求される
(4)存続期間 出願日から10年間(その後10年毎に更新できる)
(5)更新手続 更新時に使用宣誓書(公証が必要)の提出が要求される
また、登録してから5年目から6年目の間に使用宣誓書(公証が必要)の提出が要求される
(6)異議申立制度 公告日から30日以内に何人も申立できる
(7)不使用取消審判 継続して3年間不使用であることが必要である
(8)マドリットプロトコル  加盟

<フィリビンでのポイント>
特に、出願日から3年以内と登録してから5年目から6年目に使用宣誓書を提出する必要がありますので、それまでに使用を開始しておく必要があります。
これらの手続の費用が他の国と比較して別途必要ですので、あらかじめ費用がかかるということを念頭においておく必要があります。



6.マレーシア

(1)審査制度の有無 第三者の先登録商標等との類否判断などの審査あり
(2)国際分類 国際分類を採用(但し、1商標1区分毎に出願)
(3)出願時の使用宣誓書等 使用宣誓書(公証が必要)の提出が要求される
(4)存続期間 出願日から10年間(その後10年毎に更新できる)
(5)更新手続 使用証明が要求される
(6)異議申立制度 公告日から2ヶ月以内に何人も申立できる
(7)不使用取消審判 継続して3年間不使用であることが必要である
(8)マドリットプロトコル  未加盟

<マレーシアでのポイント>
出願時の使用宣誓書には公証人の公証が必要となりますので、少し費用がかかる点に注意が必要です。


7.シンガポール

(1)審査制度の有無 第三者の先登録商標等との類否判断などの審査あり
(2)国際分類 国際分類を採用(1商標多区分できる)
(3)出願時の使用宣誓書等 使用宣誓書の提出が要求される
(4)存続期間 出願日から10年間(その後10年毎に更新できる)
(5)更新手続 使用証明などは要求されない
(6)異議申立制度 公告後2ヶ月以内に何人も申立できる
(7)不使用取消審判 継続して5年間不使用であることが必要である
(8)マドリットプロトコル  加盟

<シンガポールでのポイント>
指定商品の記載が曖昧であるとのレポートがあると何回も応答を繰り返す必要があり、登録までに時間がかかることがあることに注意が必要です。
 日本では認められない包括的な小売サービスの記載が認められますので、出願時にはこのような記載も検討する必要があります。



8.カンボジア

(1)審査制度の有無 第三者の先登録商標等との類否判断などの審査あり
(2)国際分類 国際分類を採用(但し、1商標1区分毎に出願)
(3)出願時の使用宣誓書等 要求されない
(4)存続期間 出願日から10年間(その後10年毎に更新できる)
(5)更新手続 5年目までに使用証明が要求される
(6)異議申立制度 公告日から90日以内に何人もできる
(7)不使用取消審判 継続して5年間不使用であることが必要である
(8)マドリットプロトコル  未加盟

<カンボジアでのポイント>
1商標1区分毎に出願する必要があります。また、英語での出願ができます。


9.ラオス

(1)審査制度の有無 第三者の先登録商標等との類否判断などの審査あり
(2)国際分類 国際分類を採用(1商標多区分できる)
(3)出願時の使用宣誓書等 要求されない
(4)存続期間 出願日から10年間(その後10年毎に更新できる)
(5)更新手続 使用証明などは要求されない
(6)異議申立制度 なし
(7)不使用取消審判 継続して5年間不使用であることが必要である
(8)マドリットプロトコル  未加盟

<ラオスでのポイント>
異議申立制度がありませんので、この点は注意が必要です。



10.ミャンマー

(商標制度はないが、登記法で保護され得る。)
保護登記所に登記すると、ほぼ自動的に登録される。但し、3年毎に更新する必要がある。
また、警告を行う場合には、登録の事実を事前に新聞に掲載しておくことが必要である。

<ミャンマーでのポイント>
現在、商標制度はありませんが、登記法に基づく登記により保護を受けられる状態となっています。但し、近いうちに商標制度が導入されるとのことですので、無審査のうちに登記されておかれるのもよいと思われます。


11.中 国

(1)審査制度の有無 第三者の先登録商標等との類否判断などの審査あり
(2)国際分類 国際分類を採用(但し、1商標1区分毎に出願)
但し、指定商品・サービスが10個を超えると追加費用必要
(3)出願時の使用宣誓書等 要求されない
(4)存続期間 出願日から10年間(その後10年毎に更新できる)
(5)更新手続 使用証明などは要求されない
(6)異議申立制度 公告後3ヶ月以内に何人も申立できる
(7)不使用取消審判 継続して3年間不使用であることが必要である
(8)マドリットプロトコル  加盟

<中国でのポイント>
日本の商標を見た先取り的な商標権の取得が横行していますので、中国進出のできるだけ早い段階で商標権の取得を検討されることをお勧めします。


12.台湾

(1)審査制度の有無 第三者の先登録商標等との類否判断などの審査あり
(2)国際分類 国際分類を採用(1商標多区分できる)
但し、1区分内で指定商品・サービスが20個を超えると追加費用必要
(3)出願時の使用宣誓書等 要求されない
(4)存続期間 出願日から10年間(その後10年毎に更新できる)
(5)更新手続 使用証明などは要求されない
(6)異議申立制度 公告日から3ヶ月以内は何人もできる
(7)不使用取消審判 継続して3年間不使用であることが必要である
(8)マドリットプロトコル  未加盟

<台湾でのポイント>
1区分で商品などが20個を超えると追加費用が必要となりますので、商品は必要なものに限定されることをお勧めします。


13.韓国

(1)審査制度の有無 第三者の先登録商標等との類否判断などの審査あり
(2)国際分類 国際分類を採用(1商標多区分できる)
但し、1区分内で指定商品・サービスが4個を超えると使用意思の確認が求められる
(3)出願時の使用宣誓書等 要求されない
(4)存続期間 出願日から10年間(その後10年毎に更新できる)
(5)更新手続 使用証明などは要求されない
(6)異議申立制度 公告日から30日以内に何人もできる
(7)不使用取消審判 継続して3年間不使用であることが必要である
(8)マドリットプロトコル  加盟

<韓国でのポイント>
1区分で商品などが4個を超えると、日本と同じように使用意思の確認が求められますので、不要な中間費用の発生を防止するために必要な商品など限定して出願されることをお勧めします。

*アジア諸国の商標制度につきましては、法改正や審査実務の変更などが頻繁に行われていますので、このアジア諸国の商標制度の概要が正確な情報でないこともあります。実際に商標出願等の手続をなされる場合には現地代理人に必ずご確認下さい。

(2013年4月掲載)




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